訪問介護員になったことで、私に起きた変化

この仕事を始めて良かったと思うことの1つは、
『人に優しくできるようになった』ということ。

大学生の頃も人に優しくできなかったわけではないが、この仕事を始めてからはより積極的に困っている人に関わっていけるようになった。

地図をみて困っていそうな人がいれば、声をかけるようになった。

もう1つ、仕事を始めて変わったことがある。

それは、『重度の障害をお持ちの方と自然に関われるようになったこと』である。

大学生の頃に、障害者施設のお祭りにボランティアとして行くことがあった。

その際、重度の障害をお持ちの方とお会いしたが、私はおもわず一歩引いてしまった。

その時に「私は介護のような仕事はできない」と思ったし、その時点では将来訪問介護の仕事に就くことは全く想像できなかった。

大学を卒業して、紆余曲折があり私はこの訪問介護の仕事に就いたが、重度の障害のある方とうまく関われるか非常に心配だった。

しかし、仕事に慣れていくにつれ、重度の障害をお持ちの方と関わることも求められるようになった。

初めは話しかけることさえうまくできず、本来は利用者様にお尋ねした方が良いことも指導担当の方に尋ねてばかりだった。

そのように指導担当の方に聞いてばかりいると、「利用者さんに聞いてください」と言われ、「ちゃんと答えてくれるだろうか」という不安を抱えながら、お聞きしてみると当然ながらしっかりと答えて頂けた。

その後、多くの方と接する機会を頂くことで、ゆっくりと丁寧に聞く姿勢さえ持っていれば、言葉では伝達が難しい方でも目線やしぐさで多くのことを語っていることに気付かされた。

それからは、少しでも多くの『声』を聞きとれるように心がけるようになった。

そして、この仕事に就いて数年が経った頃の出来事だが、駅で構内図を見て困っている様子の車椅子に乗った2人の方を見かけた。

大学生の頃の私なら声をかけられなかっただろうが、その時の私は友達が困っている時に話しかけるような自然な気持ちで声をかけることができた。

その方々との話が終わり別れた後で、後ろから「良い人もいるもんやね」と話しておられる声が聞こえた。

私はその時、「良い人と言われるような、そんな大したことはしていないのに。」と思ったが、ふと、大学生の頃の自分を思い出すと、恥ずかしいような気持ちになった。

訪問介護という仕事を始めていなければ、地図を見て困っている人に話しかけることはなかっただろうし、障害のある方にも話しかけることはできなかっただろう。

その方々が言っていた通りかもしれない、と思った。

そして今、私はこのように自然と人に優しくできるようになって良かったと思っている。

まだまだ聞き取れていない『声』は多いが、耳で、目で、『声』を聞いて、少しでも豊かな日常を感じてもらえるように、心がけていきたい。

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